海賊とよばれた男

緊急事態宣言も解除され、先月19日には県をまたぐ移動の自粛も緩和されました。止めていた経済活動や社会活動も少しずつ再開し始めており、引き続き警戒をしながら「ウィズコロナ」の生活へと変化してきています。しかしながら元の生活水準に戻るのは数年掛かるといわれており、世界経済への影響は甚大なものになるのは間違いありません。

コロナショックは世界恐慌以来の経済危機といわれますが、国富の40%以上が損失し、膨大な数の失業者で溢れた太平洋戦争からの復興を果たした日本企業にとっては、「どちらが重大な危機なのだろうか?」と、そんな事を考えながら、6年程前に読んだ「海賊とよばれた男」という本を思い出しました。百田尚樹さんが書いた歴史経済小説で、本屋大賞を受賞し映画化もされたのでご存知の人も多いと思います。

物語は、出光興産創業者の出光佐三をモデルとした主人公「國岡鐵造」の一生と、その会社「国岡商店」が大企業に成長する過程を描いた作品です。戦前に行っていた中国や満州での海外事業全てを失いながらも、戦争から復員する従業員を次々と受け入れ、様々な仕事をやって会社を維持。そうした中で日本海軍の戦艦タンクに残った重油を処理する仕事を引き受けた事で石油事業に進出します。GHQによる制約や、日本の官僚からの圧力、更には日本の石油を独占しようとする欧米の国際石油資本相手に、民族企業の意地をかけて日本を代表する大企業に成長させるといった内容でした。

しかしながらこの物語の主人公の「出光佐三」は、逝去後、他のカリスマ経営者のようにメディアに大きく取り上げられる事はありませんでした。その理由を、百田尚樹さんは、「事業運営をする上で官僚や同業他社からは相当嫌われたので、その功績を歴史から消した方が好都合だ」と考えた人達が多かったからと述べています。そうした中でもこの本がベストセラーになったのは、敗戦によって国内外の資産全てを失い、どん底から再出発、全社員が一丸となり仕事に取り組む姿が、読者の共感を得たからではないでしょうか。

コロナショックによる景気の低迷によって、雇用環境が急激に悪化しています。労働市場の需給調整機能を担う我々にとっては、これまで以上にその機能を発揮する事、働く人達にとっては「ウィズコロナ」という新時代の働き方に対応して、衛生面の配慮を含め、今まで以上に安全に、安心して働ける支援をしなくてはいけない新たな使命が生まれました。感染症によって労働市場におこった大きな課題解決に、全社員一丸となって多くの働く人達へ共感を与える仕事をしていきたいと思います。

日本リック株式会社
代表取締役 日高一隆

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