変えるもの、変えないもの

加盟している社会奉仕団体の新年懇親会がお座敷付の「老舗料亭」でありました。過去、自分から積極的に行った事は無く、30年程前に接待で京都花見小路の料亭に行って以来。実に、人生二度目の体験でした。近年の花見小路は、インバウンド需要もあり多くの観光客で賑わっているようです。しかし当時は、伝統文化よりも常に「最新のトレンド」を追求する風潮もあり、一部の芸者遊び好きの方々だけが行くところで、夜道は閑散としていた記憶があります。私自身、バブル経済絶頂期で、他の接待の機会も多く、若かった事もあり「こんな世界なんだ」程度の感想しか持ちませんでした。

考えれば当然なのですが、花柳界の「老舗料亭」は、江戸時代から続く歴史と伝統に裏打ちされた様々な創意工夫を重ねており、非常に洗礼された印象を受けました。建物や食器、生け花といった造形物は勿論ですが、接客においても出迎える人、中居・給仕さん、女将さんや芸者さんの舞いも見事でした。現状の顧客層への対応で部屋もしつらえていて、100年を超える老舗でありながら、伝統や仕来りだけではなく、高齢のお客様への気配りも随所に感じました。敷居の高さは残っているものの、以前より排他的な雰囲気は少なくなったように思います。

日本は長寿企業の数が世界最多であるといわれています。多くの老舗企業の祖となった三大商人(大阪・近江・伊勢)の家訓や教えに共通するのは、自社の利益だけを考えるのではなく、社員も、得意先も、仕入先も、更には社会全体も、全てが幸せになるかが大事という理念です。私たちは、企業人として事業活動を展開していく上で、さまざまな決定をしなければなりません。そのときに何を基準に、どういう結論を下せばよいのか。それは、最も道徳的な結論は何かということではないでしょうか。

そんな姿勢で社員全員が事業を推進すれば、社会的信用も高まり、引いては事業の継続・拡大に繋がります。社会に必要なツールになれば、その企業は生き残れるはずです。一方で、時代の変化とともに社会の必要とする企業・サービスは変化しています。日本リック株式会社も、長寿企業と同様に、社会のニーズの変化に合わせて変えていくべきものと、変えてはいけないものとを見極め、時として思い切って自らを変えていくことを、経営理念の根幹にしています。

日本リック株式会社
代表取締役 日高一隆

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